前回の続きであるが、中国のメディアのラブホテルの報道について、正誤も含めて考察する。

中国メディアの環球網は、「日本の情侶酒店(カップルホテル)の歴史と現状」と題する記事を掲載した。

それによると、いわゆる「ラブホテル」を産業としてとらえ、客のニーズへの対応や設備やサービスの向上に

努めた結果、「巨大産業に成長した」と報じた。

記事の冒頭部分で、<ファッションホテルの1日当たりの利用者は日本の総人口の1%に当たる

約137万人、年間利用者は延べ5億人に達すると指摘。年間売上は約4兆円>としている。

これについては、株式会社テイダンの記事が的を射ているので記載する。

*<1日当たりの利用者数が137万人>
 どのような計算で、137万人となるのか定かではない。現在、レジャー・ラブホテル数は約8000店舗(4号営業店・5,940店舗/警察庁、平成27年3月発表)。1店舗当たりの部屋数は、23~24ルーム。
1日当たりの回転数は、約2.0~2.3。
ということになれば、
8,000×24×2.3=441,600組ということになり、2人となっても、
441,600×2=883,200人ということになる。137万人には及ばない。
したがって、年間利用者は、5億人ということではなく、
883,200人×365日=3億2,236万8,000人となる(それにしても、改めて計算してみると大変な利用者数になるが・・・)。
 また、<年間売上は約4兆円>ということであるが、1組当たり、平均(休憩・宿泊含め)6,000円とすると、
441,600組×6,000円×365日=9,671億0,400万円
ということで、4兆円には遥かに及ばない。

つぎに、今日のレジャー・ラブホテルの源流について<近い形態の宿泊施設は1920-30年代にも存在し、利用料金が1円だったことから「エンシュク」と呼ばれたと紹介。戦後になってからは1950年代後半に成長しはじめ、80年代には3万軒を超えた>と報じている。

これについては、1985年の「新風営法」施行時に警察庁から発表された4号営業店舗数は、「モーテル・6,800、ラブホテル・3,919店舗」である。3万件の根拠が分からない。

また、中国メディアの「環球網」は<早い時期には「売春との結びつきが強かった」としながら、現在では「必ずしもそうではない」と指摘。家族と同居する若い夫婦が利用する場合も多いとして「日本の住居は狭い場合が多い。現在のファッションホテルはカラオケや衛星テレビなど娯楽設備を備え、飲食物のサービスも充実」と、ファッションホテルは日本の住宅事情の問題点を補うサービスを提供しているとの見方>と報じている。

これについては、現在の日本の住宅において、大型テレビ、ウォシュレット、エアコンなどの設備は標準化されており、住宅の問題点を補うという点は当てはまらないのではないか。
また、カラオケ設備についても、好きな人が個人で自宅に持つこともでき、今やWiiなどにもソフトがある。
この点においても、あてはまっていない。

現在のラブホテルが存在している意義は、「非日常・異日常」空間として存在しているからである。
装置産業としてのラブホテルという時代は、すでに終わっている。

つぎに、レジャー・ラブホテルの施設概要については<ロビーには人がいない場合が普通で、従業員も利用者と顔を合わせないようにしていると紹介。利用手続きも無人化して利用者のプライバシーに配慮している場合もあるほど、利用者側の気持ちを配慮した営業方式にも注目した>と言う記事。

これ以降の記事は、的確といえる。